春日井での井戸掘り

 春日井市上条町での井戸掘りは大変だった。庄内川の西になるこの地域は、今の庄内川の形になる前は川床だったかも知れない。依頼主は「ご近所にも井戸があり、水は出るはず」と言われる。地形的にはそのとおりなので、私たちも希望を持って掘り出した。ところが、私たちが持ってきた道具では掘れないこと事態にぶつかった。
 「畑に水をやりたい」と言われるが、畑土の2メートルほど下は河原で見られる丸い石がぎっしりと詰まっている。道具では掘れないと告げるが、「どうしても井戸が欲しい。他に手立てはないのか?」と言われる。
 昔の人がやったように、2メートル四方の穴を手掘りで掘っていく以外にはない。幸い、畑の中なので土地はあり、掘り出した石や土の置き場もある。この方法で、半田でも小牧でも掘った。穴は1人しか入れない。階段状に掘り進める。やぐらを組んでバケツで石を引き上げる。そんな大変な作業を続けた。
5メートルを超すと丸い石から砂利そして砂に変わった。「下から水が涌いてくるようだ」と穴の中で作業していた仲間が言う。さらに掘り進めると、脇からも水が出てきた。水の中での作業となる。ポンプで水を揚げて作業できるようにしながら、出来るだけ深くするが、周りが崩れてきて危険になる。
穴の底に水が溜まるように工夫して、塩ビ管を立て、掘り出した石や砂利や砂を埋め戻す。最後にブロックを積んで土台を作り、手押しポンプを取り付ける。いよいよ試運転だ。呼び水をしてポンプの柄をゆっくり上下させる。手応えは充分ある。水が勢いよく流れ出てくる。この時が最高に嬉しい。依頼主さんに安堵と笑顔が見られる。ばんざーい!